先日、とあるフリーマーケットのような場で、知人がある出店者と喋ってると、通りがかったおじさんが、ワゴンの中の時代小説や推理小説の本を次々と指差し「これもこれもこれもこれも読んだ!もう読んだ!」と言い、知人も店主もあっけに取られていると、すぐおじさんはそのまま去って行ったらしい。本が好きで語りたいおじさんだったのか?しかしそのコミュニケーションはあまりにも工業地帯のからっ風のように唐突で尖すぎだ。
この話のあと、その知人の奥様からも、自分の職場で医療・福祉系のワークショップのような催しが行われた時、とにかく人の話を先取りし、話題を次から次に奪ってしまうおじさんがやって来て、運営側としてもほとほと困った……という話が。さっきの読破確認おじさんなんかは通りすがりの変な人で済むけど、こっちはもう普通に困ってしまう事態ですね。
自分の話を聞いて欲しくてしょうがない、どうにか自分を見てほしい中年の男性、おじさんの話の方がずっと深刻かつ身につまされる年齢になってきた。まあそう言いながらそういう話聞いてる間はガハハとか笑ってるだけですが。痛々しい自撮りや自傷行為を公開する若者をして「承認欲求」だの何だのいう話より(この語がネットで定着するはるか数十年くらい昔の戸塚ヨットスクール校長のインタビュー読んでたら「最近の若いもんはすぐ甘ったれたことを言う。そういうのを承認の欲求と言うてやな~云々」と語っているのを見て、やっぱやばい奴しか言わない言葉じゃんと思った)、その手のおじさんの方がよっぽど「承認欲求」の問題としてやっかいだと思う。
カルチャー的な場面で広く門戸を開いて、誰でも楽しめる場を作ろうとすればするほど、どうしたってそういうおじさんが混じってきて、全員が楽しめる機会を失ってしまうという場面は自分ごとでも他人の話でもイヤっちゅうほど耳にする。そしておじさんに大体悪意はない(あるのかも笑)所がまた問題をややこしくする。
SNSだとおじさんを排斥し攻撃する文言がバズりやすいし、そういう場面を何度も味わってイヤな気分になった人(多くは女性でしょうし、それははっきりと糾弾する権利がある)からすれば、そのように怒るのもわかるし、それ自体は至極当然だと思う。でも一方でおっさんの孤独って誰も癒やしようがないのか?とも思う。自分は今33歳という、非常に中途半端な年齢で、おじさんの世界の若輩者を名乗ってるけど、10年後20年後どうなっていくか全くわからない。というか狂ったおじさんへの道を毎日無我夢中で邁進しておるのです♪ 20年後、フリーマーケットで並べられた本の背表紙を見て「これもこれもこれも読んだ!」と絶叫する私を見かけたら、皆さんすぐに中谷美紀の『砂の果実』の「あの頃の僕らが嘲笑(わら)って軽蔑した 空っぽの大人に気づけばなっていたよ♪」を歌って下さい。
この話を考える時にいつも、自分の頭に思い浮かぶのが、57歳で自殺した画家の鴨居玲の絵。これ!ドーン

全身を苦しそうに折り曲げたおじいさんが、画面上手のほんのり光指す方に向けて、何か言おうとしているようにも見えるけど、その表情は深く苦しげに刻まれた皺と闇で何も見えない……一見して「暗っ怖っヤダー」という絵ですけど、よく見るとおじいさんはかなり悲しそうにも見えませんか?で、この絵のタイトルが『私の話を聞いてくれ』!ヤバいですよねー。鴨居玲の絵はどれも人間が生きていく刻苦が生々しく描かれているけど、この一枚は特に強烈じゃないでしょうか。誰の心の中にもこういう、報われないが故に醜く、醜いが故に報われない、矮小で哀しい自分自身がいるのではないかと思わせてくれます。まあかと言って、イザそういうおじさんを目の前にして、優しく出来るかどうかとなると厳しい所が、この世を難しくしているのですが。
この絵を所蔵している長崎県美術館のサイト内のこの絵の解説が秀逸なので以下引用。
スペインのラ・マンチャ地方の街バルデペーニャスでの滞在中に手がけられた作品。鴨居の画業の中で最も充実していた時代の作品である。
この時期、鴨居は老人や酔っ払いなどをモティーフにした作品を数多く手がけている。(略)
腰を曲げ右手を前にかざした横向きの老人は、悲痛な叫びをあげているように見える。白い空虚な背景に佇む老人の様子からは、拭い去ることのできない孤独感が浮き彫りにされているかのようだ。
鴨居はこうした老人や酔っ払いを描きながらも、彼らのなかに自らとの共通点を見出している。そして鴨居はこの老人に自己を投影し自らの「分身」を作り出すことによって、「私の話を聞いてくれ」という老人の叫びを自分のものへとすり変えているのである。(略)

「私の話を聞いてくれ」はピアニストの中島ノブユキのアルバム『Cancellare』のジャケットにも使われていて、オリジナル曲以外にもバッハからかしぶち哲朗まで幅広いチョイスの曲を取り上げてて良さそうです……って聴いたことないんです。せっかくなんでこの日記更新したらCD買います(配信にはないのです)。
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