2022年よく聴いた曲(後)

大晦日に前編を書いてからもう二月になっちまいました。年末から1月の半ばまで、家の給湯器が壊れて、アホほど寒い中銭湯通いを余儀なくされました。管理会社に電話しても一向に工事の段取りが進まず、その原因が「世界的な半導体不足の影響で…」と言われ、こんなちっぽけな自分もの存在もまた常に歴史の激流の中で生きていることを意識させられました。Y2Kリバイバルからのセカイ系?

Post Malone // I Like You feat. Doja Cat

コロナの時代になってからヒップホップに対する感度がかなり下がって(別に元々さほど高くないんですが)日本のラップは以前ほど熱心でなくなり、USのものは辛うじて流し聴きしてる……みたいな状態で、どれもいいんだけど、ものすごく喰らうこともない、みたいな調子が数年続いていて、不安もあるけど、それでも他に聴くものもいっぱいあるししょうがないかな~と思っている所に、それでも何となく繰り返し聴いていたのがこれ。Doja Catはもともと好きなんですがゆらゆら帝国『美しい』のPVの実写版みたいな映像が面白い。

Floating Points // Vocoder

前情報とかなしで、シャッフルで音だけ聴いて、カッコ良すぎてワッと驚かされた。ブリープからIDMの移行期のWARPのテクノがそのまま分岐して成長したらこんな感じになってそう。実際、その後RDCのイベントでDJ見た時はLFOとかAlexander Robotnickとか古典テクノ/エレクトロいっぱいかけてて面白かった。

Supershy(Tom Mish) // Happy Music

一聴して掴まれた系でこれも。トム・ミッシュの12インチ系ダンス・ミュージック特化型プロジェクト。

HANKYOVAIN – 他人の事情

これも一聴系。これは大阪のcompfunk recordで、CHIYORI×YAMAANのライブを観に行ったイベントで、京都のDJ AFRさん以外は地元のDJについて予備知識全くない中で聴いていたら、ラリー・レヴァン風のジャジーなディープ・ハウスの上に突然ヌルヌルとしたラップが始まって……compfunkの真っ暗いフロアー(窓から入る光以外ほぼ明かりがない)でこれを聴いた時の衝撃はかなり強烈。

Omniboi // Brilliant Boogie

これは12月半ばにリリースされたばかりのアルバム『Gleam Dream』の曲なので、よく聴いたというより、これからよく聴きそうな曲なんですが、漫画家の西尾雄太先生がツイッターで「『too.』とかの頃のFPMっぽい」と紹介していて、その時期のFPM(beautiful~contact~too~zoo~Imaginationの辺り。熊原正幸氏がいる時期ですね)っぽいとなったらやっぱり気になりますね。

今年中盤くらいから、自分の音楽的なルーツってなんだろうと考えた時、とりあえずヒップホップでもテクノでもなくて、ニューウェイブ/ポストパンクだと今までは言っていたけど、本当に自分が最初に心奪われた音楽はFPMとかPizzicato Fiveとか、TSUTAYAの区切りで「J-CLUB」と銘打って並べられていたCDだったなと再認識した。今までは、それを堂々と言うのは、ミーハーっぽくて恥ずかしい気持ちがあったが(中高生の行動範囲内の田舎のCDショップでも手に入るクラブミュージックの音源はそういう”J-CLUB”的なものしかない一方で、ネットなどではそういうCDがハイプとして小馬鹿にされていたりする)もうそれも20年近く昔の作品になり、しかもその時代のCDも中古市場から減りつつある(まだ全然手に入りますが、一時期は本当にジャンクコーナーにいっぱいあったんですよ)現状を見て、自分のルーツはこれや!と世代の問題として言うべきタイミングが来つつある気がしております。私のルーツはJ-CLUBです。!!!!!!!!!!!!!!!!!!

fromis_9 // Up And

昨年の”We Go”で名前を覚えたfromis_9の、夏のEPに入ってた曲で、もろRasmus Favor風のちょいラテン乙女ハウス。上のJ-CLUBの話とも繋がってきますが、2000年代に乙女ハウスっていうハイプがあって、ゆめタウンのギャル服屋などでかかってそうなヴォーカルもののハウス全般をそういう風に呼んでたんです。日本のプロデューサーだとテイトウワ、FPM、あとFreeTEMPOやDJ KAWASAKI、DAISHI DANCEなんかのCDに「乙女ハウス!」みたいなことが書かれたポップが付いてました。商品に手書きのポップでおすすめ情報が書かれてる、みたいなのも2000年代はもっとフレッシュだったというか、今の世代だとむしろマイナスな要素なんだろうなーとか思いますが。

ピアノやストリングス、女性ヴォーカル(ソウルフル過ぎない、キャッチーな声質の)などが入ったポップのハウスで、結果としてそれは「クラブに来たことがない人が想像した素敵でオシャレなクラブミュージック」みたいなポップさで、それ故にやはりコアでスノッブなクラバーからはナメられていたんですが、実際にクラブに行きたくても行けなかった年齢のころにそういう音楽と出会った身としては、夢見心地の美しさを感じ取ったのですが。月日が流れクラブにも普通に行くようになり、最初のようなワクワクした気持ちも紙ヤスリで削られたように摩耗してめったに感じなくなり、まったくテンションが上がってなくても「イェー!」とか言えるようになった今でも、この「クラブに来たことがない人が想像した素敵でオシャレなクラブ(ミュージック)」の妄想の切れ端が脳みそのどこかに引っかかってるから、何となく音楽とその周囲の諸々を続けている気がする。

akiko,坪口昌恭,Mbanja Ritchy // Funkin For Jamaica

テイ・トウワによるカバーでも有名な、トム・ブラウンによるディスコクラシックを、ジャズシンガーakikoがカバー。東京ザヴィヌルバッジャ~DCPRGなど菊地成孔との長年の共演でも知られる鍵盤奏者の坪口昌恭によるキーボードとシンセ(この曲のシンセベースとか、坪口氏のシンセの使い方はとにかく音色のチョイスが毎回キモチいい)が素晴らしい。フランス語のラップ、どこかで聴いたことあるな~と思って、ラッパーのMbanja Ritchyのことを調べたら、初期Mondo Grosso(J-CULB!!!!!!)~瘋癲のB-Bandjの現在の名義と知って驚き。

なかむらみなみ // Maneater (Prod. andrew)

数年前の、TENG GANG STARR活動休止後、メンバーでラッパーのなかむらみなみが、andrewと組んで曲を出し始めた時、一曲きりの企画かと思っていたら、その後も定期的にタッグを組んでリリースを続け、曲ごとに二人のキャラクター/ポジションが上手く融和してるのが見て取れて、正直最初はそれが見抜けなくてびっくりした。このコンピでもぶっちぎりでキャッチーな存在感。

入江陽 // ニモ(荷物をおろして)

これは2021年のリリースなんですけど、年末だったんで2022年の1月とか2月くらいの方がよく聴いてたので。シンガーソングライター入江陽による、この数年単発的にリリースされる年数入りタイトルのシングル曲。OGGYWESTのLEXUS 88と、福岡の鬼才プロデューサーJunes K、二人それぞれが作った2つのトラックを1曲の中でビートチェンジ的に使った

他にもNC4Kや85acidと言った国産テクノレーベル、相変わらず追ってる南米シティポップ、関西?の謎多きアンファンテリブルなマッチャポテトサラダ……などなど聴いてました。でも2000年代の南米ミニマル、キツネメゾン(覚えてますか?)、オールドスクールエレクトロ、独ニューウェイブなど昔のもの聴いてる時間の方が多かった気がする。

2022年よく聴いた曲(前)

2022年リリースされた曲(2021年末にリリースされた曲も含みます)でよく聴いたものとその思い出など書いていきます。

NewJeans // Attention

250 // Bang Bus

年季の入ったK-POPファンから熱狂的な注目を集めるNewJeansですが、f(x)~Red Velvetから連なるSM TOWNの最良の部分を感じる世界観の作り込み、これは確かに唸らされますね。一方でこの熱狂を、あまりにも若すぎる演者らが引き受けることと、巨大化し過ぎたK-POP産業とファンダム文化の負の側面を、それこそ年季の入ったK-POPファンこそ憂いざるを得ないという状況もあるようですが……。

にしても、とにかく曲が、トラックが素晴らし過ぎ!Attention始めHurt、Hype Boy、そして現時点での最新曲「Ditto」も手掛けたプロデューサーの250(イオゴン)。BTSやITZYにも曲を提供しているK-POPの売れっ子プロデューサーながら、この人が今年出したソロアルバムが非常に挑戦的な内容で、ポンチャックを始めとした「K-POP紀元前」な韓国のドメスティックな歌謡曲──大文字のポップ史には恐らく残らないであろう、大衆に愛されながらも忘れられた音楽──を蘇らせた内容。日本ではキワモノ的に紹介されたポンチャックが、NewJeansやBTSを手掛けるようなプロデューサーの手によって、このような形で再構築されてるという点でもう相当ぐっとくる、が、そういう成り立ちを知らなくても”Bang Bus”から感じられる情熱的なユーモアと音の粒立ちは「これ何?」と立ち止まらざるをえない完成度だと思いますが、どうでしょうか。

tofubeats // PEAK TIME

tofubeats // Vibration feat. Kotetsu Shoichiro

『FANTASY CLUB』からの『RUN』を聴いた時は、カラッと風通しのいい、チカラの抜けたアルバムになってるな~という印象でしたが、コロナ禍を経てのトーフビーツの久々のフルアルバムは、更にカラッと乾いた内容で、磨き上げられた音質の統一感、CDとして聴くとちょうど気持ちいいボリュームと構成(1~3曲目の滑るような流れ、終盤に5分以上の長さの曲が密集してる所とか面白い)、一切ベタベタした所がない。ベタベタした所がない、というのが自分の今年の求める趣味なのか、音楽全体の今年の傾向なのか、そういうモードは感じますね。

と言いつつ、このアルバムについては私自身ラップで参加し、リリースライブも配信で参加し、MVも作って、更にインタビューもするという、一回の客演で何回しがむねんというインサイダー極まるガッツリとした絡みぶりで、アルバムそのものの話をす整理して語るにはまだもうちょっと時間がかかりそうなんですが。でも普通にヤバいアルバムだと思う。

STUTS // One feat. tofubeats

2022年はアルバム以外の仕事もめちゃくちゃ多かったトーフビーツの中でも、これはよく聴いた(シングルとしてのリリースは2021年末ですが)。このアルバムの『Storm(feat.KMC)』も、『大怪我』ラテンエディットとでも言うべきトラックが泣けて良かった。そういえばKMCさんのアルバムも良かった。MikikiでKMCさんとOMSBの二人を迎えてのインタビューという記事を書いたんですが、結構今までの文章仕事の中でも一番歯切れよく出来たかも知れない……。二人の人柄のお陰でしょう。

OMSB // 大衆

そのOMSBが今年リリースした『ALONE』も。この数年に出した2枚のEPからはエントリー無く、全て新曲という構成にも驚きましたが、内容も素晴らしかった。でもこの良さを今の所うまく言葉にできない。「仲間外れじゃなくて/元々ここにいなかっただけ」というラインは、人によっては凄く希望があるようにも、寂しいようにも聴こえるけど、自分にとってはどっちかまだ決められない。文脈的には前者の意味で出てくるフレーズだと思うんですけど、頭から順番にリリックを追うように聴いてきた時に、このフレーズが出た時のスッと心臓を掴まされたような心地が忘れられない。

『ゲゲゲの鬼太郎』の、鬼太郎誕生のエピソードで、生まれて間もなくは墓場で自分を拾った人間に育てられた鬼太郎が、人間の生活に馴染めず疎んじられ、目玉おやじと共に育ての親の家を出ていくシーンがあり、その時の目玉おやじの「こんな不自由な所は出よう/外にはおけらだとか死人だとかお化けだとか話のわかる友人がたくさんいる…さあ行こう/どこでもいい きのむくままに…」というセリフがあり、地味ながら好きなシーンです。諦観を経たからこそ得られる、わずかではあるが確かな希望とでも言うべき不思議な明るさがあり、オムスの作品にはいつもそういうものを感じる。SUMMIT Themeでラップしてた竹中直人「笑いながら怒る人」のネタじゃないけど、2つの感情がぶつかり合ってそこからエネルギーを生んでるというか。

Daphni // Cherry

4小節、いや2小節、いやさ1小節でいかに耐久性のある、炊きたての白米のごとき、繰り返しても飽きないループを作るか?というダンスミュージックを作る上での命題に対する、2022年における解の一つがこれではないでしょうか……という大上段が不似合いなほど、風通しのいい、ベテランならではの軽やかさのある作品。ManitobaやCaribouなどの名義を使い分け2000年代前半から活動しているカナダのプロデューサーDaniel Snaithが、2011年以降使っている名義の新作。よりジャンルレスでその時その時の衝動を追求する不定形な音楽性のプロジェクトらしいけど、なんだかんだダンサブルな4つ打ちの作品が印象強い気が。

表題曲の、せわしなくリフレインするライヒ風のFMシンセを前景に、ゆったりとしたベースラインを後景に据えつつ、派手な展開はなくとも各パートのレイヤー構造の微妙な奥行きの変化でジワジワと聴かせる展開の上手さ……シビれる~。

Louis Cole // I’m Tight

ポップとポップスのグラデーションをかき回しながら、インディーな初期衝動と職人的なこだわりの間を自由に行き来し、アルバムで聴かせるためのファンクを作る、という意味で、プリンスの遺伝子を強く感じたLAの奇才ドラマーの新作。

日本での最初の紹介者はキープ・クール・フールだと思うんですが、Louis Coleはこの10年近くずっと高く評価されているし、Genevieve Artadi(Louis ColeとKNOWERというデュオを組んでいるヴォーカリスト)のバンドFame Cultの音源は今でもたまに聴いてるんですが、Louis Coleについては何となくそこまで聴き込むことがなく……なのでこのアルバムも、一聴した時は「シュッとしてるな~」という軽い印象で、衝撃を受けるという感じではなかったんですが、気づくと何故か繰り返し聴いておりました。一見してすぐわかるちょっとしたユーモラスな演出や人脈~周辺シーンの盛り上がりなど、キャッチーな話題性あるポイントは多いけれど、音楽そのものはかなり掴みどころのない、上手く説明しようとすると難しい内容な気がする。ポップ/ポップスの優れた作品は往々にしてそういうものかも知れませんが。

Keita Sano『Love Hate Love Think

https://madloverecords.bandcamp.com/album/love-hate-love-think

岡山が生んだ快男児Keita Sano、数年前からハウスに留まらない作風の変化(ハウスの中でも幅広く作ってましたが)が著しいですが、CDやカセットでもリリースされたこれは強烈でした。ジャングル、ブレイクビーツ、ダブ、全部を歪ませて、切って繋いで、最後にもう一度歪ませたような……一時のThe Bugにも通じるような、ベース・ミュージックの曼荼羅となって迫りくる。

一方でBandcampでは、初期から一貫した生々しい音像のハウスの新曲もバシバシ公開していて(多分今年だけで100曲以上!)そっちも面白いです。

Koji Nakamura×食品まつり×沼澤尚『Humanity』

Spotifyのまとめによれば、自分が今年一番長く聴いていたアーティストは食品まつりらしい。毎年毎年「あなたが今年のトップアーティストは……Yellow Magic Orchestraです!」とか出て恥ずかしくてシェアしてなかったけど、食品まつりなら堂々と人に言える。私が一番聴いている音楽は、食品まつりです。

三者ぶつかり合うことのないサウンド、と言って有機的に調和し合うアンサンブルを奏でることもなく、「もの派」の展示のように、ただそこに並べて置かれた、しかし確実に同じ場所の空気を共有する、音のかたまり……。

このユニットでのライブも春先に大阪で観たが、MIDIなどで同期していないエレクトロニクス担当の2人+生ドラムという編成で、テンポを合わせるための段取りはどうしているのか?誰がイニシアチブを取ってるのか?と思い、食品まつりさん本人に聞いた所「沼澤さんに僕らが合わせて行って、たまに追いつかなくてズレたりする所が面白い」とのことで、なるほどなーと唸った。

ちなみに初冬の川崎郊外で行われたRAINBOW DISCO CLUBの番外編的な野外レイブ企画でも、食品まつりさんのライブを観たが、その時はめちゃくちゃBPMの早い4つ打ちになっていて驚いた。イベント自体が、深夜に行くほど生き残ってるのはバキバキの人のみなので、DJもその層に向けてチューニングせざるを得ずどんどんBPMが上がり、バキバキでない自分は芝生のなるべく湿ってなさそうなスペースを探して完全に横になって始発を待ったが、BPM130,140,150と上がって行った末に、食まつさんのキャリア的なルーツと言えるジューク/フットワークに戻っていったら面白いかもと思った。

思った以上にいろいろある!まだ半分くらい!年をまたいで後半は来年の自分に任せます!よいお年を~

ECD配信解禁

ECDがFINAL JUNKYからリリースしていたアルバム9タイトルが配信で解禁!持ってるものも多いですが、嬉しいですね。年々、ECDの残した音楽や言葉が自分の中でデカくなってゆくのを感じています。政治や社会、家族に対する思いなどももちろんそうなんですが、TR-808&TB-303によるラップ弾き語りアルバムとでも言うべき『Crystal Voyager』のような、とにかく自分の出来る範囲でなるべく自分の手でやってみる、という制作スタイルに心動かされます。そういう実作業的な、制作の環境が、思想信条と繋がってる感覚が大事と言いますか……。

ちなみに『The Record Covers』という本の中で、ECDの諸作のデザインに多く携わった石黒景太氏いわく『FINAL JUNKY』はThe Contortions『BUY』に影響を受けたとのこと。『自殺するよりマシ』のSuicideっぽさしかり、ECDのニューウェイブ/ポストパンクの影響をヒップホップに応用するセンスもまたタマラない所。

FKJに対するゴリラからの回答、Saxsquatch

SaxsquatchなるYouTuber?ミュージシャン?の動画が面白いです。ルーパーやDAWを使った、一人で全ての楽器を奏でて重ねていくタイプの演奏動画は、FKJ”Tadow”を始めひとつのジャンルとして非常に人気ですが(ドラム、ベース、リード、ボーカル……と、音楽というのはパートごとに分かれているという、当たり前の事実が、誰から見ても、何度見ても意外なくらい面白い、というのがあると思うのですが)、Saxsquatchを名乗るこのゴリラは、アメリカはノースキャロライナ州・チャペルヒルの森にてMIDIコントローラー、キーボード、ベース、そしてサックスを一人で演奏し、「One More Time(Daft Punk)」「Lean On(Major Lazer)」と言った名曲のカバーを次々に披露してくれます。

いずれもボトムの薄い、アタックの弱い音色が何とも癒される……。YouTubeもInstagramも一番古い投稿は昨年8月のもので、まだまだ今後の活躍が楽しみな存在です。

凹バナ(ヴォコーダーの話)

検索していたmixiのヴォコーダーコミュニティにぶち当たったんですが、ヴォコーダーのことを「凹」と表記していたので、それをタイトルにしました。

家にいる時間が必然的に長くなり、そうなるとまた新しい楽器や機材が欲しくなるが、給付金もいつ来るかわからんし、ここは堪えて既にある機材を今一度見直そう……ということで学生の頃から使ってるシンセサイザーKORG microKORG XL+を何の気なしに引っ張り出してきた。このシンセはボコーダー機能が付いてるんですけど、このボコーダーをふと使ってみたらかなり楽しくなってしまった。

ちなみにロボット・ヴォイスとしてよく混同されがちなのが、Daft Punk「One More Time」やPerfumeのヴォーカルなどはオートチューン、Bruno Mars「24K Magic」のイントロやパソコン音楽クラブ「Virtual TV」などで聴かれるヴォーカルはトークボックス(トーキングモジュレーター)と、それぞれヴォコーダーとは違う技術、エフェクトが使われています。それぞれ仕組みや用途がかなり違うんですが、一緒くたにされがちだし、たまに区別が付かない音源もあります。

microKORGを買った際に付いてきてたはずのグースネックマイク(チョウチンアンコウの提灯のように伸びたマイク)は紛失してしまったので、普通にSHURE SM58のマイクとポップガードを付けて発音してみた所……グースネックマイクで喋った時より、発音が明瞭に聴こえる!……気がする。で、海外のDTMフォーラムなどで検索してみたが、やはり普通にSM58でヴォコーダーを使ってる人が多いみたい。実際に使うとなると、グースネックマイクの方が配置的には便利だし、あと上記のYMOの動画のように、見た目のカッコ良さでインカムマイクも憧れますけどね。

ヴォコーダーの音作りはやはり「発音が聴き取れるかどうか」という所が大きいと思うのですが、なかなかまとまった情報に今の所出会えておりません。「YMOのONGAKU」などによれば、「TECHNOPOLIS」の録音の現場でも、「トキオ!」のパートは、「ト」はピッチベンドを下げた状態で発音し、上げながら「キォ」で、最後の「オ」は再び下げながら発声する、というような流れで録音したとか。あと「録音では伝わらないと思うけど、現場ではめちゃくちゃマイクに向かってでかい声で歌ってた」というのも、どこかで読んだ記憶が……。

Kraftwerkの「The Robots」の「ルルルゥオボッ(ツ)」という、過剰な巻き舌も、ドイツ語の発音を誇張しているのかと思っていたけど、どちらかというとヴォコーダーに乗せやすい声を追求した結果、ああなったのではないだろうか。子音の発音がキモ、というのはトークボックスも同じですね。

ということでヴォコーダーの練習として、電気グルーヴの「Shangri-La」をカバーしました。もともとJimi Tenorのリミックス・バージョンが好きでコピーしてたトラックがあったので、更にそれをグッとテンポを落として歌ってみました。テンポが遅い方が歌いやすいので……。

今後もちょくちょくヴォコーダーは使っていこうと思います。

サックスの出てくるニューウェイブは全部かっこいい

Umlaut // Soap

ベルリンのSameheadsなる小さなライブ・スペース/バーが、店に出演したり縁のある地元のバンドやアーティストの音楽を紹介するコンピレーション「Hooch!(2019)」に収録されていた1曲。Cosmo WiseとSam Bardsleyの2人から成るUmlaut、フラットなドラムマシンの鳴りに対して、金切り声っぽいサウンドではなく低域のまろやかなサックスとボーカルが折衷的で独特です。

Medium Medium // Hungry So Angry

Adrian Sherwoodの初期の仕事をまとめたコンピレーション「Sherwood At The Controls Volume 1: 1979-1984」の1曲目に収録されていて、結構この手のニューウェイブ~ポストパンク編集盤だと定番の曲のようですが、知りませんでした。ノッティンガムのパンク・ファンクバンドMedium Mediumの2枚目のシングルで、バンドはこの後1枚のスタジオアルバムを出した後、サックス兼ボーカル、中心人物のJohn Rees Lewisが脱退し、83年には解散したとか。PV冒頭で手前でミキサーを触ってるのが若かりし日のシャーウッドでしょうか。彼の手によるイントロのサックスにかかるエコーだけで、これ一発だけとしても、エヴァーグリーンなバンドサウンドではないでしょうか。

Blurt // Get

現在も活動している、ベルリンのバンド。60年代から詩人として、70年代末からアルトサックスとともにミュージシャンとしても活動するTed Miltonによるリーダー・バンドで、何でもクラプトンもその才能を認めていたとか……。どのアルバムも全編こんな感じです。

EGO-WRAPPIN’ // Nervous Breakdown(頂2014)

日本のバンドも、という事で……ニューウェイブとかポストパンクは前提として瞬間芸的なヘタウマ・チープを是とするマナーがあるので、今や熟練味も貫禄もたっぷりのEGO-WRAPPIN’をその流れで紹介するのもアレですけど、このライブでのアレンジはめちゃくちゃポストパンクじゃないでしょうか。ガラスを掻きむしるようなギターも最高!!!!

James Chance & The Contortions // Dish It Out

毎年、正月は襟を正してこれとかSuicideを聴きます。途中でアンプに繋いでないのに気付いたようなオルガンにぐっとくるんですが、この曲が収録されたコンピレーション『No New York』の参加バンドらが、プロデューサーのBrian Enoについて「イーノは大して何もしていなかった」と揶揄されていたというのを知って、納得しました(まあ一方で、例えばMarsの曲ではギターのクリックにエコーをかけて、それをトリガーにトラック全体にコンプレッサーをかけて曲に独特な空間を味付けした……みたいな細かいテクニックは随所にあるらしいですが)

他にもラッパーのECDが「神経衰弱」でスカスカのTR-808ビートの上でサックス吹いてるやつなんかも、チャルメラ的な哀愁があってカッコ良かったな。エスクィアのジェームス・チャンス特集本『NO WAVE』の中でECDが『ウヌボレではなく、自分の吹いているサックスも、ジェイムス・チャンスや安倍薫の吹いているサックスも区別がつかない。即興でサックスを吹くことは人間から個性を奪い去ってしまう。それは多分、望ましいことだと思う』と言うようなことを書いていたのが印象的です。

Ge’ Down E.P.について

「Ge’ Down E.P.」という作品をHIHATTからリリースしました。HIHATTはプロデューサー/DJのtofubeatsさんが運営しているレーベルで、ハウス系アーティストの新人発掘+in the blue shirtやdj newtownなど関西のプロデューサーやトーフ氏と縁のあるアーティストがリリースしていて、今年の始めにはリミックスアルバム「HIHATT REMIXES」でも私のやってるバンド・ピクニックディスコもリミキサーとして参加させていただきまして、その流れもあって今回こういう作品が。

私はある音楽のカタチと精神性を内面化する作業をなるべく「勉強」と言わず「マナー」と言いたいのですが、ハウスは勿論、昔から好きなジャンルというかスタイルで、以前から作ってはいたのですけど、ようやくそのマナーみたいなものが身に着いてきたかな……と思えるのが本当にこの1年くらいで、しかし何とて勉強ではないから合格通知も卒業証書もないので、こうやって人様の手を介して自分のあずかり知らぬ第三者の目にも入るようになる=社会に出るのをもってして「これにてマナーを身に着けました☑」と一段落打てた感が得られるのも、レーベルから出す喜びでしょう。トーフ氏には毎回感謝です。ダンス・ミュージックは流通してナンボですからね。と言って「多くの人が聴いてれば聴いてるほどエラい」というのでもなく、個人のボヤッとした妄想みたいなものが着の身着のままで何となく外の社会に出ちゃってる・そして何となく受け入れらてる、というのが理想的な状態であります。めちゃ極端な例ですけどJamal Mossとか。

ジャケットは今年の2月にDJ Apacheという地元の先輩(写真最右)が主催したパーティでDJした時、遊びに来ていた緑さんという知人に撮ってもらった写真を使いました。アートワークだと胸のDef Jamにモザイクがかかってるのは、バラエティ番組で提供に行くとき何故か出演者の着てる服のロゴにぼかしが入ってる(スポンサーの兼ね合いとかの都合なんでしょうか?)状態が不穏で好きなので、あれを意識しました。L.A. Club Resourceっぽくて気に入ってます。

Ge’ Down

Kerri Chandler率いるMadhouse Recordsの曲をよく聴いていて、かつ、ちょうど9月9日にちかんでRolandがドラムマシン定番名機TR-909をプッシュする例年のキャンペーンをやっていて、TR-909のキックとタムがハネる感じの、王道なハウスを作ろうと思って作りました。エレピのサンプリングに「Groove」というプリセット名のディレイ(Ableton Liveの)をかけ、タムのフレーズはSpliceのサンプルで、ハネ感が気持ちよくて気に入ってます。

S

最近はNC4KなどからリリースしているblackglassGと、ファンクやディスコの曲の情報をLINEでやり取りしている過程で、ワンループでひたすら引っ張る曲を作ろうと思い、こういうトラックに。声ネタはRoland TR-8Sのプリセット。プリセットって最高ですよね。楽器メーカーの方が知恵を絞って作った、応用が利く音の数々、バシバシ使わねば損ですよ。

Hi Baby

キックはTR-8Sで、ベースはKORG ELECTRIBE MXのPCM音源のベースで打ち込んだものをLive上で切り貼りしています。ズンベケ、ンペンペ♪ってなPCM音源のペラペラしたベースの音が昔から好きなので、このパターンで他にも作りたいですね。SRATMの「Hello Baby」がふと頭の中に出てきて、あのトラックの声ネタの感じカッコ良かったよな、でも今手元にCDないし配信もないし聴けないな……と思い、頭の中で想像しながらサンプリングして配置した声ネタです。(と言ってる内につい最近、SRATMも含めたテイ・トウワ初期ディスコグラフィーが配信で聴かれるようになりました。「HAPPY」のドラムしびれる~~!)