2022年よく聴いた曲(後)

大晦日に前編を書いてからもう二月になっちまいました。年末から1月の半ばまで、家の給湯器が壊れて、アホほど寒い中銭湯通いを余儀なくされました。管理会社に電話しても一向に工事の段取りが進まず、その原因が「世界的な半導体不足の影響で…」と言われ、こんなちっぽけな自分もの存在もまた常に歴史の激流の中で生きていることを意識させられました。Y2Kリバイバルからのセカイ系?

Post Malone // I Like You feat. Doja Cat

コロナの時代になってからヒップホップに対する感度がかなり下がって(別に元々さほど高くないんですが)日本のラップは以前ほど熱心でなくなり、USのものは辛うじて流し聴きしてる……みたいな状態で、どれもいいんだけど、ものすごく喰らうこともない、みたいな調子が数年続いていて、不安もあるけど、それでも他に聴くものもいっぱいあるししょうがないかな~と思っている所に、それでも何となく繰り返し聴いていたのがこれ。Doja Catはもともと好きなんですがゆらゆら帝国『美しい』のPVの実写版みたいな映像が面白い。

Floating Points // Vocoder

前情報とかなしで、シャッフルで音だけ聴いて、カッコ良すぎてワッと驚かされた。ブリープからIDMの移行期のWARPのテクノがそのまま分岐して成長したらこんな感じになってそう。実際、その後RDCのイベントでDJ見た時はLFOとかAlexander Robotnickとか古典テクノ/エレクトロいっぱいかけてて面白かった。

Supershy(Tom Mish) // Happy Music

一聴して掴まれた系でこれも。トム・ミッシュの12インチ系ダンス・ミュージック特化型プロジェクト。

HANKYOVAIN – 他人の事情

これも一聴系。これは大阪のcompfunk recordで、CHIYORI×YAMAANのライブを観に行ったイベントで、京都のDJ AFRさん以外は地元のDJについて予備知識全くない中で聴いていたら、ラリー・レヴァン風のジャジーなディープ・ハウスの上に突然ヌルヌルとしたラップが始まって……compfunkの真っ暗いフロアー(窓から入る光以外ほぼ明かりがない)でこれを聴いた時の衝撃はかなり強烈。

Omniboi // Brilliant Boogie

これは12月半ばにリリースされたばかりのアルバム『Gleam Dream』の曲なので、よく聴いたというより、これからよく聴きそうな曲なんですが、漫画家の西尾雄太先生がツイッターで「『too.』とかの頃のFPMっぽい」と紹介していて、その時期のFPM(beautiful~contact~too~zoo~Imaginationの辺り。熊原正幸氏がいる時期ですね)っぽいとなったらやっぱり気になりますね。

今年中盤くらいから、自分の音楽的なルーツってなんだろうと考えた時、とりあえずヒップホップでもテクノでもなくて、ニューウェイブ/ポストパンクだと今までは言っていたけど、本当に自分が最初に心奪われた音楽はFPMとかPizzicato Fiveとか、TSUTAYAの区切りで「J-CLUB」と銘打って並べられていたCDだったなと再認識した。今までは、それを堂々と言うのは、ミーハーっぽくて恥ずかしい気持ちがあったが(中高生の行動範囲内の田舎のCDショップでも手に入るクラブミュージックの音源はそういう”J-CLUB”的なものしかない一方で、ネットなどではそういうCDがハイプとして小馬鹿にされていたりする)もうそれも20年近く昔の作品になり、しかもその時代のCDも中古市場から減りつつある(まだ全然手に入りますが、一時期は本当にジャンクコーナーにいっぱいあったんですよ)現状を見て、自分のルーツはこれや!と世代の問題として言うべきタイミングが来つつある気がしております。私のルーツはJ-CLUBです。!!!!!!!!!!!!!!!!!!

fromis_9 // Up And

昨年の”We Go”で名前を覚えたfromis_9の、夏のEPに入ってた曲で、もろRasmus Favor風のちょいラテン乙女ハウス。上のJ-CLUBの話とも繋がってきますが、2000年代に乙女ハウスっていうハイプがあって、ゆめタウンのギャル服屋などでかかってそうなヴォーカルもののハウス全般をそういう風に呼んでたんです。日本のプロデューサーだとテイトウワ、FPM、あとFreeTEMPOやDJ KAWASAKI、DAISHI DANCEなんかのCDに「乙女ハウス!」みたいなことが書かれたポップが付いてました。商品に手書きのポップでおすすめ情報が書かれてる、みたいなのも2000年代はもっとフレッシュだったというか、今の世代だとむしろマイナスな要素なんだろうなーとか思いますが。

ピアノやストリングス、女性ヴォーカル(ソウルフル過ぎない、キャッチーな声質の)などが入ったポップのハウスで、結果としてそれは「クラブに来たことがない人が想像した素敵でオシャレなクラブミュージック」みたいなポップさで、それ故にやはりコアでスノッブなクラバーからはナメられていたんですが、実際にクラブに行きたくても行けなかった年齢のころにそういう音楽と出会った身としては、夢見心地の美しさを感じ取ったのですが。月日が流れクラブにも普通に行くようになり、最初のようなワクワクした気持ちも紙ヤスリで削られたように摩耗してめったに感じなくなり、まったくテンションが上がってなくても「イェー!」とか言えるようになった今でも、この「クラブに来たことがない人が想像した素敵でオシャレなクラブ(ミュージック)」の妄想の切れ端が脳みそのどこかに引っかかってるから、何となく音楽とその周囲の諸々を続けている気がする。

akiko,坪口昌恭,Mbanja Ritchy // Funkin For Jamaica

テイ・トウワによるカバーでも有名な、トム・ブラウンによるディスコクラシックを、ジャズシンガーakikoがカバー。東京ザヴィヌルバッジャ~DCPRGなど菊地成孔との長年の共演でも知られる鍵盤奏者の坪口昌恭によるキーボードとシンセ(この曲のシンセベースとか、坪口氏のシンセの使い方はとにかく音色のチョイスが毎回キモチいい)が素晴らしい。フランス語のラップ、どこかで聴いたことあるな~と思って、ラッパーのMbanja Ritchyのことを調べたら、初期Mondo Grosso(J-CULB!!!!!!)~瘋癲のB-Bandjの現在の名義と知って驚き。

なかむらみなみ // Maneater (Prod. andrew)

数年前の、TENG GANG STARR活動休止後、メンバーでラッパーのなかむらみなみが、andrewと組んで曲を出し始めた時、一曲きりの企画かと思っていたら、その後も定期的にタッグを組んでリリースを続け、曲ごとに二人のキャラクター/ポジションが上手く融和してるのが見て取れて、正直最初はそれが見抜けなくてびっくりした。このコンピでもぶっちぎりでキャッチーな存在感。

入江陽 // ニモ(荷物をおろして)

これは2021年のリリースなんですけど、年末だったんで2022年の1月とか2月くらいの方がよく聴いてたので。シンガーソングライター入江陽による、この数年単発的にリリースされる年数入りタイトルのシングル曲。OGGYWESTのLEXUS 88と、福岡の鬼才プロデューサーJunes K、二人それぞれが作った2つのトラックを1曲の中でビートチェンジ的に使った

他にもNC4Kや85acidと言った国産テクノレーベル、相変わらず追ってる南米シティポップ、関西?の謎多きアンファンテリブルなマッチャポテトサラダ……などなど聴いてました。でも2000年代の南米ミニマル、キツネメゾン(覚えてますか?)、オールドスクールエレクトロ、独ニューウェイブなど昔のもの聴いてる時間の方が多かった気がする。

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