またラップ聴いてる話


自分にとって2020年以降、コロナの最中、聴く音楽の変化で顕著だったのが、現行の日本語ラップをあまり聴かなくなったこと。昔から聴いてる、本当に好きな一部のラッパー(OMSBとかECDとか)だとか、知り合いの作品はともかく、シーンの潮流、話題作といったものに、SNSで流れる「情報」として目に留めても、以前ほど面白がって聴く場面が減っていた。

SNSの「情報」……ということで言えば、70年年代とか80年代の音楽で名盤とされているもの、もしくはジャズとかクラシックとか、そういうものにもまだ聴いていないものが山ほどある中で、毎週のように話題作がリリースされ「これは今年の年間ベスト級だ」「キャリアを更新した」とか何とか、音楽が紹介されているのにも何となく疲れてしまった、というのもあります。音楽に限らず自分がエンターテイメントに求めるものって、ダラッとリラックスした状態で見れて、それでいて見続けると人生とか人間の哀しさ・愚かしさ・愛おしさみたいなものがチラッと垣間見えるような瞬間で(バキ童チャンネルもそういう目で見ている)もちろんアーティストとして一世一代・本気の真剣勝負の作品が見たい時もあるけど、そういうのはこっちも見るのに体力使う訳で、それが次々にリリースされると、聴く前から疲れてしまう。芸人という分野に対するリスペクトはあるけど、なんでヘラヘラ笑いたくて見てるのに、知らない人の人生の決定的瞬間をハラハラしながら見せられるんだろう……と思って賞レース番組観れないのと自分の中では一緒の理由ですね。

ちょうどステイホーム期間中の暇つぶしで、GROOVEやRemixなど2000年代の音楽雑誌をひたすらメルカリで買って読んでると、2007年に中原昌也がインタビューで、K-Bombの凄さを一通り語った後の段で、ヒップホップ(に限らずいろんな場面を想定していると思うけど)シーンについて「男同士で無難なことをやって、かっこつけてればいいって人ばかりでしょ」と言っていて、これ凄くわかるな~と思いました。まあこれは地元のヒップホップ・シーンとかでも感じる(地元の知り合いなんて誰もこの日記とか見てないでしょう、という体で書いてる。見てたら「見たよ!」と話しかけてください。あいまいに笑います)し、でも日々の労働の合間に仲間内でワイワイやって楽しいこれで充分、っていうのこそ本来的なB-Boyの姿なのかもな、とも思うし、微妙な所です。

あとコロナに関係なく、自分が30代になったというのもあり、ラッパーの、自分よりかなり若い人の「金、車、クスリ」みたいな話を聞くのがだいぶキツくなってしまった、というのが何よりデカいかも知れない。いやでもクスリに関してはちょっと違うな……これは後の方で書きます。

で、このままでは今年一番聴いた日本語ラップがバキバキ童貞チャンネルのEDになってしまう、という時期を経て、最近は「ああ、日本のラップでも頑張ってる人、面白い人ってやっぱりまだまだいるんだ」とまた素直に思える場面が増えました。そもそも自分が久しぶりにラップの曲を作った(今月配信します)ということもあり、改めてSpotifyとかで聴いてたら好きな曲が結構あった……という感じです。

Elle Teresa / 平気
さっき書いたことと矛盾しますが、それこそTwitterの「ラップご意見番」的な人たちの間で「最近のテレサは凄い」と評判だったので、聴いてみたら、確かにめちゃくちゃ良かった。母音を略する時とそうでない時の使い分けだったり、韻とユーモラスな言葉選び(「隠れてやってるクスリ/ミニにタコ」「一人でいる時さみしい/まるで日持ちしない刺し身」)、鞄やポーチの中身を見せられてるようなリアル過ぎる情景描写とか、最終的には凄くポップになってる所もすごい。Deech × Lil’Yukichiの客演曲”Yap Yap”も良かったけど、このつい最近出た『SUKI』EPはどの曲もイイ……。

Minchanbaby&Rhymetube / Yeah feat.FARMHOUSE
2022年リリースで、それこそあんまりラップ聴かなくなってた頃にリリースされてたので、全然ちゃんと聴いてなかった。改めて過去作から聴き直してる時に聴いてみたら、凄く良かった。自分は小学生の時から、”若者”に「頑張ろう」的なことを歌われるのが嫌いでしょうがなくて(これははっきり覚えてて、小学生の時に保険会社か何かのCMソングでジェネリックの「ゆず」みたいなフォークデュオが「人生まだまだこれからさ♪」と歌っているのを見て、乳歯の残った口から『ケッ』と画面にツバ吐いていた)でもMinchanbabyのようにキャリアもある大人で、色々あったんだろうな、という人からこういうことを歌われると、素直に元気が出る。

こしのかんばい / シラフのうちに feat.SPRA
山仁 / 君が世

先ほど「酒、車、クスリ」の内「クスリ」だけはちょっと例外と書いたのは、「酒、車」はそれがテーマに選ばれた時点で、ボースト=マッチョな歌になることがほぼ決まってるけど「クスリ」に関してはむしろ逆の、人が生きていく哀しさや愚かさ、マッチョとは真逆の「弱さ」のある歌を誘発するテーマだと思ってて、そこが好きだ。ずっと強がっていないといけないという弱さ、弱みを人前に曝け出せるという強さ、というようなことを早川義夫が書いてたけど、クスリについてこういう風に歌える人にはそういう意味での「強さ」があるなーと思う。

e5 / Luv In Grave
で、弱みということで言うと、恋愛のラップ、それも一方的な片思いとか失恋の内容だと、一気に「弱みを見せる」内容になってぐっとくる曲が多い気が。どうしても男性のラッパーより女性のラッパーの方が圧倒的に恋愛の歌が多いので、自ずと女性のラッパーの曲に比重が増える……90年代から2000年代にかけては、男性のラッパーがラブソングを書くことは「セルアウト」と見なされバカにされていた過去がある訳ですね。じゃあ今はそういう価値観は無くなったのか?というとこれがそもそも「セルアウト」という概念自体の方が無くなって、でも男性のラブソングは別に増えていない、という気がします。もっと男性による情けないラブソングが増えてほしいんですが。わりと世の中がそこから変わっていく気がする。で、この曲、中村一義の歌みたいに、歌詞の半分くらいは歌詞情報を見てやっと理解できるくらい、発音も譜割りもかなり壊してる(こういう音楽的な響きのために文章/言葉としての意味が伝わらなくなるくらい発声を壊す手法、名前があると便利そう)んですけど、そのぐちゃぐちゃな感じが、愛が失われていく過程で情緒が壊れてく様子と感応しててそこがいいなーと思います。

Neibiss / Looking 4u
OGGYWEST / 牛久

神戸のラップ・デュオNeibissのアルバムも良かった。初期FPM~AKAKAGE~RIP SLYMEなど、90年代末の日本のクラブミュージック(TSUTAYA等ではこの辺りとピチカート・ファイヴや電気グルーヴ、中田ヤスタカなどをひっくるめて”J-CLUB”というジャンルの棚に入れられており、そういうのを5枚で1000円レンタルでチマチマ借りていた日々がありました)っぽいボサノヴァやラテン・ブレイクビーツのサンプルを切り貼りしたナイスなセンスのトラックメイクに、絶妙に力のヌケた、それでいてキメる時はキメるラップが素晴らしい。Neibissの自分の印象は、Die, No Ties, Flyとの共演曲「明るい夜」を聴いて、ベテランながらまだまだフレッシュであろうとするDie, No Ties, Flyサイドに対して、逆に、早く大人(ベテラン)になりたいヤング=Neibissという図が自分の中で出来てて、まあ、趣味良い若者は常に老成を目指すという。
そのDie, No Ties, FlyのLEXUZ YENがYOUNG KYUNと組んでいるOGGYWESTの方は西荻を拠点に、近年コンスタントに作品をリリースしてる二人組。30男の焦燥感、メランコリックがユーモラスに歌われてて、同世代として非常にアツくなる……この「牛久」はとりわけ、冒頭からYAMAANさんの名前が出てくるし、日記のように具体的な内容でしみじみとエモく親近感湧く。OGGYWESTもNeibissも知り合いなので、知り合いだからホメるのか?と言われそうですが、そもそも自分は最終的に「自分の音楽と友達の音楽、あとは自分が生まれる前の時代の音楽しか聴いてない」くらいの状態になりたいので、身内ノリと言われようともガンガンホメていきます。

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